むさしんぐのエゴライブ!

ラブライブ!を中心に好き放題呟きます。

【A・ZU・NA LAGOON】A・ZU・NAだけのBlue!を探しに。#世界は青いはず

こんにちは。むさしです。

今回は2023年2月4日(土)、2月5日(日)に渡って東京ガーデンシアターで開催される、ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~A・ZU・NA LAGOON~』に向けて、墓が立つ前に思いを残しておこうという、いわば遺書のような記事になります。これまでのA・ZU・NAの歩みを、印象的ないくつかの楽曲とともに振り返っておこうと思い今回筆を執りました。

また、本記事は、Twitterでのタグ企画【#世界は青いはず】にありがたいことにお声がけいただき、メモリアルなA・ZU・NA 1st LIVEに花を添えることができればと思いタグ企画に賛同した記事となります。他の皆さんのA・ZU・NAへの大好きの叫びに触れることのできる素晴らしい企画となってるので、【#世界は青いはず】で調べてみてください。

それでは、今回もまたお付き合いいただけると嬉しいです。

 

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【虹ヶ咲2期7話感想】髪飾りを結び直し、翡翠色の光を放つ――。

どうもこんにちは、むさしです。

今回は虹ヶ咲2期7話「夢の記憶」の感想記事となります。

前回6話までで、ランジュとの出会いをきっかけに、同好会が見い出した「ユニット」という新しい形、その結成秘話が描かれ、いよいよ今回から栞子、ミア、ランジュと同好会が接近し始めます。今回第7話は三船栞子にスポットが当たる回で、同好会の活動、とりわけせつ菜に対して良き理解者というポジションとなっていたこれまでの栞子が、いよいよスクールアイドルとして誕生を果たす重要な回でした。

それでは、今回もお付き合いのほどよろしくお願いします。

 

 

1. あらすじ

ついに始まった5校合同開催による第2回スクールアイドルフェスティバル。1日目は東雲学院、2日目は藤黄学園、3日目はY.G国際学園と続き、4日目は紫苑女学院での開催となった。その展示室に飾られていたスクールアイドル時代の三船薫子と幼い栞子の写真。かつて栞子にもスクールアイドルに憧れる気持ちがあったことを知った侑たちは、栞子を同好会に誘う。しかし、3年間真剣にスクールアイドル活動に打ち込んだものの「ラブライブ!」への出場が叶わなかった姉・薫子の姿を見ていた栞子は、自分の適性を最大限発揮できる生き方、自分に合った役割を全うすると話し、その誘いを断ってしまう。

 

www.lovelive-anime.jp

 

前回第6話、「”大好き”の選択を」の感想記事はコチラから!

sunagimo5critical.hateblo.jp

 

2. 先の見えない道

「誰もが幸せになれる世界、私が望む世界。

それはどこにあるのだろう。」

今回の冒頭歌詞引用、第7話は三船栞子の「決意の光」から。

まぁ~、それはそうですよね。この時点で栞子の曲は「決意の光」、「翠いカナリア」、「コンセントレイト!」の3曲が出ていますが、100人に監督やらせても満場一致で「決意の光」でしょう。どれも良い曲ですが、「翠いカナリア」を使うには文脈背景が不足しすぎ、「コンセントレイト!」はスクールアイドルとして歩み始めた栞子が歌うからこそ活きる曲なのでやはり不相応な気がします。

この「決意の光」、本来の歌詞では

私が望む遥かな世界 どこにあるんだろう?

立ち止まり見上げた先に 道が開いた

という一番の歌い出しですが、今回の引用では”遥かな”という形容詞が脱落しています。これまでの様に語感等の理由で落とされた可能性が最も高いというのは理解したうえで、「何故?」という疑問が生まれますが、これについては僕なりの仮説が思い浮かんだため、この記事の最後でまとめたいと思います。

「誰もが幸せになれる世界探して」というのが2番Aメロの歌詞ですが、1番2番の順序が逆転していることによって、「誰もが幸せになれる世界」=「私が望む(遥かな)世界」という有機的な繋がりが原歌よりも明確に見られて、個人的アッパレ賞ですね。後述しますが、何よりアニメ2期での栞子のデザインとガッチリ嚙み合っている感覚があります。

 

 

物語は、栞子と薫子の回想シーンから。

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三船姉妹の過去の話となると、ここまでやってきて初めてようやくバックが描かれましたが、なるほどそういうことかと。

 


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ラブライブ本選出場を目指していた薫子のスクールアイドル引退。涙を流す薫子と、思いが溢れ出ている姉を呆然と見つめる栞子。

これなぁ……。我々は、本選に出場できないながらも、”次”があったスクールアイドル達ばかりを知っていますし、なんならその次のチャンスを確実にモノにしてきた先代スクールアイドル達の輝きが目に焼き付いてしまっているので、あんまり想像してきませんでしたけど、こういったシーンは全国津々浦々のスクールアイドルが抱えるモノで、むしろこの光景の方が一般的なんですよね。”次”の無かったスクールアイドルとしては、A-RISESaint Snowの二組がありましたが、前者は揺るぎないチャンピオンとしての矜持を見せμ’sの前に立ちはだかりましたし、スクールアイドル引退後は、プロ転向を決めていました。スクールアイドルとしての活動は当然区切りを付けたわけですが、μ’sに敗れた後も「なぜ負けたのか、というよりも何故μ’sが勝てたのか」について熟考し、明確に”次”を見据えている印象がありました。後者は、北海道予選で敗れたもののAqoursとの頂上決戦、幻のラブライブ決勝大会を決行し、Believe Againというマスターピースを披露しました。聖良にとっては最後のパフォーマンスでしたが、そこにあった感情は悲しみよりもずっとプラスの感情で、嬉しい、楽しい、感謝と幸福感に包まれていたように感じます。理亞にとっては”次”に挑む決意を固めていましたね。

μ’sAqoursともに”敗者”を経験していますが、その後、決勝大会で優勝を果たしています。これまで描かれてきたスクールアイドルとはかなり性質が違うのがここでの薫子たちですが、これが大半のスクールアイドルなんですよね。この切り口というのは、今回の虹ヶ咲を見てハッとさせられました。

 

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「てっきりあなたもステージに立つんだと思ってたわ。」

「それは子どもの頃の話でしょう。私の適性はみなさんを応援し、サポートすることです。」

過去回想から、A・ZU・NAのパフォーマンス裏で話す姉妹。もうここまでで、栞子の抱えているもの、「スクールアイドル」となることへの枷の存在が伝わってきますね。姉との過去、ここにすべてが隠されているようです。

この時点までの栞子は、ずっとスクールアイドル同好会のために尽力してくれていました。一方で、1話の「特別扱いはできない」というセリフのように、同好会”だけ”に力添えしていたわけではなく、万事が上手く回るように、生徒会、各同好会と連携を取りリーダーとして立ち回っていたのでしょう。この働きぶりからも、他のことに時間を取られたくないという思いや、サポートに徹するという本人の言葉の肉付けは十分なように思えます。ただ、「やりがい」だけで身を捧げてばかりでいいのか。アニメ虹ヶ咲では、幾度となく「ココロの声」に耳を傾け、「やりたいことをやる」という大きな一本の筋を辿ってきました。後に栞子がスクールアイドルとなることを知っているからかもしれませんが、いまだに栞子の心の底は見えていないように感じます。

自分の適性を「サポートすること」だと語ることについては、”適性”を重んじる栞子にとって、この時点では”嘘偽りない”自己評価なんだと思います。それも決して主観的ではなく客観視な自己評価なんだと思いますし、これまでのストーリーが補完してくれるように、それ自身は100%正しい栞子の適性だとは思います。ただ、この「完璧な自己評価」に僅かな綻びが生じていて、「自分がスクールアイドルになる」ということについては取り付く島もないように塞ぎ込んでしまっていて、”適性”の有無を検討すらできていない状況であるように感じます。

 

3. 夢が叶う場所

 

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「彼方ちゃん楽しみ過ぎて、夜しか眠れなかったぜ~~」

「彼方さん、それ普通です…。」

彼方ちゃん……ッ!!

これ、よくあるネットの(つまらん)下りなんですけど、彼方が言うと滅茶苦茶良い。本当に良い。「普通」じゃないんだよ。

僕が彼方を激推ししているっていうのもあると思うんですけど、他の誰でもなく彼方が言うセリフだから良いんですよね。同好会のみんなは笑っていましたけど、マジで感慨深いものがあります。彼方がスクールアイドルに対して本気で向き合っていることは2話3話あたりで強調した通りですが、合同開催となった第2回SIFでは溺愛する妹と共に過ごせること、開催を実現するまでに同好会が超えてきたたくさんの壁、ユニットという新たな軸が生まれたことなど、目一杯頑張ってきたからこそ実現してこられたものが数多くあるんですよね。「楽しみ」ゆえ気分が高まって寝付けないということこそ、よくある話だと思いますが、いつも夜遅くまで頑張っている彼方が「楽しみゆえ」しっかり”夜寝られる”というのは、「普通」じゃないんです。遥ちゃんと”ともに”歩んでいくことを決めた1期7話以降、生活の中で彼方自身で抱え込んでいたものは多少減ったんだと推測しますが、毎晩頑張っていた勉強をやることなく真っ直ぐ眠りに向かうのは、「普通」の彼方らしくはないものの、どこまでも彼方らしく感じられます。スクールアイドルに対する心意気を感じますし、目一杯楽しみたい、最高のSIFにしたいという思いが伝わってきます。常々同好会への並々ならぬ思いを語っていたからこそ、彼方ちゃん本当に良かったね…という気持ちになってしまいます。

 

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栞子に話しかけるも、立ち去るランジュ。

本当に「目」が見えないこのカットなぁ…。ENJOY IT !の時もそうですが、ランジュの抱える「孤独感」のようなものがハッキリと伝わってきて胃に悪いですね。 

 

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なんでこんな厄介オタクに……。

よくライブ会場で目にする”怖いオタク”の真似をする副会長、見たくなかったぜ…。

ただ、「一緒にせつ菜のライブに行く」という叶わない約束を菜々と交わした副会長を憂いていたこともありましたが、熱狂的ながらも身近で応援してくれるパトロンとなれたのは正直に良かったと思います。

 

 

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これマジで!!!!!!!!!!!!

マ~~~ジでアニガサキ認定まであります。

ここだけスクフェスの作画していて、本当そういうところだぞアニガサキスタッフという感情です。この二人が同じ舞台に立つというだけでもこの第二回フェスの”意味”は大きいのに、そのシーンだけ作画を変えてくるの、こういう本編に直結しないファンサービスは賞賛しまくりです。虹ヶ咲が始動する前はスクフェスのモブでしかなかった2人。だからこそ、第二回フェスの開催が本当に”奇跡”のようでありながらも、ただひとつひとつ着実に歩みを進めたからこその実現であることが、本編と全く関係ないこのワンカットからにじみ出ているように思えます。

 

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朝香果林限界オタクの綾小路姫乃と、”ご本人”の「夢」のステージ。

もちろんこれもSIFならではですしとても良いですが、個人的には1期好き好き人間なので、VIVID WORLDをやっていることに無茶苦茶グっと来ました。アニメ時空で虹ヶ咲メンバーの曲がどの程度披露されているのかは知りませんが、朝香果林が”スクールアイドル”として歩み出し、虹ヶ咲の代表として披露したこの「はじまりの曲」は、ダイバーフェスで「スクールアイドル」を広めた特別な曲ですし、「朝香果林といえばこの曲!」となっているんでしょうね。これをステージ袖から見ていた姫乃と共演するというのがまたこの上なく良い。朝香果林がスクールアイドルとして歩んできたものが透けて見えるような気がします。

 

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「参加するみんなの、夢が叶う場所。今回のスクールアイドルフェスティバルも、それが実現できていますね。」

同好会が掲げ、推し進めてきたスクールアイドル同好会の理念。これに共感したからこそ、栞子は手を貸しました。自分がリーダーとなって準備をしてきたフェスで、彼方×遥(スクフェス衣装)、果林×姫乃、エマ×ラクシャータ(スクフェス衣装)と作中を超えた(まさに)”夢の競演”が実現し(当然、メタ的視点だけでなく当人たちも"夢のようなステージ"と感じていると思います)、当初の理念通りの開催ができています。

 

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スクールアイドルだけでなく、ファンが楽しんでいる様子は副会長が(激しめに)表していますし、「みんな」が楽しんでいること自体は、栞子として満足のいく状況のはずです。

なのに、晴れない表情の栞子。副会長の「表現」にヤレヤレ…とした表情を見せつつも、「自分を全力で表現する」副会長の姿は、やや眩しく映ったのかもしれません。

サポート役とは、得てして表舞台に立つことはなく、縁の下の力持ちとして貢献するものではありますが、栞子が心の底から「サポート」の適性”だけ”があると感じているならば、これは栞子にとってこの上なく理想的な「結果」のはずです。

 

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にも関わらず浮かない表情なのは、本人が自覚しているのか、無自覚なのかは定かではありませんが、「まだ満足していないから」でしょう。スクールアイドルに対して1ファンとは異なる感情を抱える栞子に芽生えているモノとは。以降のプロットに繋がります。

 

4. 虹ヶ咲チームU-16

 

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今ソルジャークラス1stいたな???

 

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場面は変わり、1年生組とミアの交流のシーン。

はい、せ~~~~の

マ~~~~~~ジでアニガサキ…。

1年生ズのバランスの良さに関しては、今更どうこう言う必要も無いですよね。1期8話でしずくの落ち込んでいる様子を目敏く感じ取り、ともにパンケーキを食らったことなどから、1年生チームの絆は感じ取ることができます。従来のスクールアイドルは、学年ごとの繋がりが特に強く、作中でも行動を共にすることが多かったですが、こと虹ヶ咲においては、他シリーズに比べて”学年”の印象ってそんなに強くないように感じています。それはもちろん、これまで”ソロ”の展開が主軸だったからというのが主な理由だと思いますが、そんな虹ヶ咲の中でも学年のまとまりを強く持っているのが後輩組の1年生ズだと感じます(次点で3年生くらい、とはいってもエマ果林、エマ彼方みたいな2人組の印象。2年生は皆無じゃない?)。の3人の後輩感の強さの中に時折姿を見せる”強さ”がメタクソにいいんですよね…。

というのは置いておいて、なんでこのシーンがお気に入りなのかというと、この「1年生ズにミアが加わるバランス感の良さ」が素晴らしいと感じるからです。

 

重要なのは、ここにきてミア・テイラー天王寺璃奈が出会ったことですね。

この二人はまぁスクスタ通りで、ミアの加入模様を描く上で重要なカップリングになるんだと思いますが、個人的にこの二人のアンバランス感は良いなと思いますね。つまり、年下だけど上級生のミアと、年上だけど下級生の璃奈の点対称な関係性が面白いところだと感じています。このシーンとか、初対面の”上級生”なのに敬語を全く使わず、物おじせずに主導権を握る璃奈が良いですよね。それぞれお互いのことどう思っているんですかね。璃奈にとってミアは、「先輩」という認識なのか「年下」という認識なのか。この違いだけでも見方が変わるはずなので、興味深い点です。ここでは「年下」という感じなのかな?

 

sunagimo5critical.hateblo.jp

 

6話の感想記事をまんま引用していますけど、この通りですね。

ミアって年下だけど後輩感が無いというか、幼さみたいなのがあまり無いというのが個人的な印象なんですよね。その中でたまに見せる年相応な反応なんかが愛らしくもあり、ただやっぱり基本はしっかり者で確かに「3年生」なんだなと感じることがあります。一方で1年生ズはあまりにも「後輩」っぽい3人で、「先輩」のミアの方は「年下」という関係性であるのに、4人集まったときのおさまりの良さが無茶苦茶いい。これ、もう明らかにミア・テイラーを同好会へ導く導線として璃奈を代表とした1年生ズの絡み始めが機能していくと思いますが、例えばミアを受け入れるのが3年生ズだったら、また印象は全然違うんじゃないでしょうか。何とは言わないけど"大きい"お姉さんたちに囲まれるミアちゃんは、急に3年生感が無くなってしまうように感じてしまいます。ミア・テイラーというキャラクターが抱える、「14歳の高校3年生」という取っ付き難い属性も、1年生ズと混ぜ合わせることで特殊な個性を殺さず、「先輩」っぽさの背伸び感と、年相応で等身大のミア・テイラーの両軸を明瞭に感じ取ることができますね。これは本当にナイスです。

 

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また、この一幕はこれで終わらず、1年生ズがミアを気にかけて「わざわざ」交流を図ったというのが巧い。表情の乏しさから他人とうまく関われなかった璃奈、自分を偽って”孤独”と戦ってきたしずく。かすみに関しても、一見すると明朗な性格ですが、「無敵級*ビリーバー」あるいは「Margaret」で謳われるように、自身の「かわいい」に一人思い悩んでいました。他の誰でもないこの3人だったからこそ、フェスティバルで盛り上がっている校内で「ひとりぼっち」のミアに声をかけたくなったのかもしれません。

 


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"アマチュア"と煽られて分かりやすくへそを曲げるかすみですが、引き留める璃奈のお願いを聞いて、意固地になることなくすぐ翻意する姿勢を見せるのも、これまで積み重ねてきたかすみと璃奈の関係性の賜物ですよね。しずくは、えっと……、6話の時よりも演技(笑)がずっと上手になっていたと思います。

 

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そして何より、璃奈の”コレ”ですよね。

「ちょうど、ここに割引券が。」

「一緒に、どうかな……?」

これ、もちろん皆さんご存じの通り、1期で天王寺璃奈が宮下愛から受け取ったジョイポリのチケット、そのお返しをするような場面なんですけど、何もかもの構図が100%合致しているのが個人的に鳥肌モノでした。コレ、ただ愛さんが璃奈にしたことを、今度は璃奈がミアにしてあげたってだけじゃないんですよね。その他何もかもの要素が、凄く似通っているんです。年齢的な関係、心的な距離感、置かれた状況など、あの時の愛を璃奈に、あの時の璃奈をミアにそのまま置換したかのような構図となっています。

中でもグッと来たのは、その振る舞い方が璃奈 ize されていたことです。愛さんから与えられてきたものを「今度は私の番」といった具合に立ち振る舞う璃奈。年下相手だからといって、愛さんみたいに「お姉さん」として接することはできないけど、璃奈には璃奈のやり方があります。愛さんには他人にはない明るさとコミュ力があり、自分にグングン惹きつける魅力がありますが、他人と繋がることに人一倍の労力を要する璃奈だからこそ、同じ立ち振る舞い方でも「一緒に、どうかな…?」という璃奈らしさが際立ちますね。このシーンを見て、前回の記事で感じた「先輩として見ているのか、年下と考えているのか」という些細な問いの答えが出たように感じています。

ミア・テイラーについては、少しずつその性質が見えてきていますが輪郭はいまだはっきりしておらず、「核」となる部分は掴めていません。このキャラを動かすにあたって、「14歳の高校3年生」という尖った性質が枷となるものだと思っていましたが、この性質を最大限に活かして1年生の3人と繋がりを持たせたのは本当にファインプレーだと感じています。1年生ズがわざわざこのようなお節介を焼けたのも、この「年下の先輩」という関係性のためですし、実に鮮やかなシーンだったと感じています。

 

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お前の割引券はないけどね。

 

4. 破れた夢の跡

 

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禍々しすぎだろ…。

ハンバーガーが好きならどんなハンバーガーでも食べられるわけじゃないよね…?流石にゲテモノ感強すぎない?うまそうにムシャムシャ食べてるけどさぁ。

 


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自分のファンを見送る中顔を曇らせるランジュ。

「ファンと触れ合うこと」は、同好会側のスタンスに近く、ランジュの考えとは対極にあることは度々言及されてきましたが、このシーンを見てランジュの心境の変化を感じました。いや、心境の変化というとちょっと違うんですが、変わりつつある段階というか、迷いが生じているような印象を受けました。「与えるだけで良い」という一方向的な関係性を望むランジュにとって、ファンからサインを求められてこれに応えるという交流は”与える”といえば与えるですが、本質は違いますよね。どちらかというと同好会よりの交流方法だと思います。当然ランジュもサインの1つくらいなんてことなく対応するとは思いますが、だとするとこの表情の変化は「何故」なんでしょうか。

兆候はQU4RTZ『ENJOY IT!』の時からありました。クラップを取り入れてファンと一体となり、4人のハーモニーとスクールアイドル×ファンのハーモニーをも魅せつけるステージを披露したQU4RTZ。あの時、エマは「伝わったかな、ランジュちゃんに。」とこぼし、かすみは「きっと伝わってますよ!」と答え、4人は微笑んでいました。このライブを見に来たランジュは「私には真似したくても、できないステージだった。それは認めるわ。でも……!」と言葉を残していましたね。ファンとの交流で顔を曇らせたランジュを見た今、改めて考えてみると、やはりこのライブでQU4RTZの思いは届いていて、ランジュのココロは揺れ始めたんじゃないかなと。ただ、完全に同好会の理念に気持ちが傾いているわけではなく、自分が貫いていたものが疑わしく感じられてきて、迷いが生じてきているんだと思います。ただ、一度ひびが入ると綻びは加速度的に広がり、DiverDiva(ランジュは見てたっけ?)、A・ZU・NAのライブに触れることによって「疑念」はどんどん膨れ上がっていった。曇らせた顔は「なんで私はファンと仲良くしているの…?」という類の感情、戸惑いなんじゃないでしょうか。

 

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そんな中、同好会メンバーとミアが一緒にいるのを見つけるランジュ。犬のようにミアを呼んでたけど、まぁ子犬ちゃんなんでね。

そして引かれ合うように集まり出す同好会のメンツ。ここにいない2年生組は紫苑女学院とのコラボステージに出ているようですが、ランジュはこのステージを見に行く誘いを断ります。その理由は、1話からずっと本人が言っているように、最終日の同好会とのステージに気持ちが100%向いているからだと捉えるのが自然ですが、前述のことを踏まえると、今のランジュは同好会のステージを見られる精神状況じゃなかったのかもしれませんね。”コラボステージ”なんて、「まさに」ランジュが今触れると火傷してしまいそうですし。

 

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紫苑女の展示室へ。

紫苑女学院の歴代スクールアイドルの活動を見る中、薫子が紫苑女の元スクールアイドルであったことを知ります。

 

何気に”元スクールアイドル”というのも、多分シリーズ初ですよね。なおかつ前述の通り”敗者”でもある薫子の存在は、7話だけに留まらず、ラブライブ!史においても大きな意味を与えてくれるかもしれません。や、スクスタでもう”大きな影響”を与えてるんですがね……。

「こっちが妹の栞子。

可愛いでしょ。高校生になったら絶対スクールアイドルやるんだって言ってたんだよ。

私たちの代ってパッとしなくてさ。ラブライブも予選落ちだし、当時は栞子をガッカリさせちゃっただろうけど…。でも、これは姉の勘なんだけど、あの子の『やりたい』って気持ちは、変わってないと思うんだよね。」

 

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三船先生、この時の毛先がほんの少し赤みがかってますけど、もしかして今のそのディルックヘア、一度も髪切ってないんじゃ…。まぁどうでもいいです。

コレ、初見で見たとき、「優木せつ菜さん!?」と思うくらい面影が似ている印象を受けました。八重歯があるだけで、あとは髪留めの位置がせつ菜とシンメトリーになっているように見えましたね。ともあれ、「え~!?」しか言ってない驚きっぱなしの2年生ズが良かったです。そりゃ驚くよな。急にきてベラベラ喋り過ぎだし。

 

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とはいっても、ここにきて僕は初めて「三船薫子、やるじゃん。」と頷いてしまいました。「ラブライブ!」シリーズにおいて、物語を突き動かしてきたものの一つに「裏付けも根拠も何もない可能性」を信じて疑わないというものがあると思っています。すべての始まりはμ’s1期1話挿入歌ススメ→トゥモロウ。あの頃、”何も持っていなかった”穂乃果は

だって可能性感じたんだ そうだ…ススメ!

と歌いました。穂乃果が感じた可能性は実現するには限りなくゼロに近く、だからこそ初めはμ’sパトロンは決して多くはありませんでしたね。家族である雪穂ですら難色を示していました。それでも廃校の危機を救うことに成功し、音ノ木坂のみんな、μ’sを応援してくれるファンみんなと駆け抜けるμ’s「みんなで叶える物語」というキャッチコピーを見い出し、ラブライブ優勝を成し遂げるまでに至りました。もちろん、様々な要因があって生まれた軌跡ではありましたが、「不確かな可能性」を信じ切ったからこそ生まれた道だったとも思います。

Aqoursだって同じです。統廃合の危機に瀕し、自分たちの輝きに対して「0」を突き付けられてもなお、「輝きたい!」という動機に基づいて”浦の星”の名をラブライブ史に刻みました。

少し話は逸れましたが、これまでのシリーズで人物を突き動かしてきたこの「想い」薫子が栞子に対して抱いていた”姉の勘”に感じたんですよね。まだスクールアイドルとして歩み始めていない栞子。その道に足を向けようともしていません。でも、薫子の中にはハッキリとした予感があるんですよ。

中でも、栞子の「やりたいことでは無く、適性を重視する」というスタンスに対して、栞子が内に秘めているであろう「やりたい!」の気持ちを、何の根拠もない”姉の勘”で疑わず微笑むという構図にたまげてしまいました。栞子が”スクールアイドル”として誕生するためには、クリアしなければならない障害がいくつかあり、「スクールアイドルに対する適性」の有無ではなく、ラブライブの根幹にある「やりたいかどうか」という哲学に目を向けさせる動機になり得るこの一幕は、うまいことやったなぁと感じます。

 

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薫子の過去を知り、栞子の”スクールアイドルへの憧れ”を知った一同。

これまで同好会が歩んできた道のりを思い出せば、栞子の元に駆けつけるというのは至極当然のことですね。

 

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「私はスクールアイドルはやりません。もう、諦めましたので。」

「結局姉にはスクールアイドルの適性が無かったのでしょう。

思うような結果を得られず、夢破れ傷ついて終わりました。」

「私は、自分の適性を最大限発揮できる生き方をしたいと考えています。

それは、みなさんの夢をサポートすることです。ステージに立つことではありません。」

 

「両方やればいいじゃないですか」

「それはあなただからできることです!!」

 

羨望の眼差しで姉を見ていた栞子が、その姉に対して「適性が無かった」と言ってしまうことが辛いですね。言い過ぎの感は否めませんが、三船栞子が憧れていたスクールアイドル像は「悲しみの余り涙を流す」ことではなかったのかもしれません。最も、「悲しみ」だけなのかというのは、追々紐解いていかなければなりませんが、「憧れのスクールアイドルが流す涙」というのは、当時の栞子少女に強烈な印象を与えるには充分です。十分な実力を持ち、努力も惜しまなかった姉ですら、夢を叶えることができず涙を流して活動を終えてしまったわけですから。幼いころに受けたスクールアイドルへのトキメキを胸に、スクールアイドルで「夢」を追う薫子の姿を見て「夢」を抱いた栞子が、「夢」に裏切られ涙を流す姉の姿を見る。繰り返しになりますが、自分の「やりたい!」という気持ちに諦めを付けるには最もらしい理由だと思います。

 


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姉の話をしている時は、険しい表情をしていた一方で、「サポートすること」という自分の適性を語るときの栞子が笑顔になったのも印象的でした。自分の選択が決して悲しいものではなく、自分の適性に沿って幸せに過ごすという”ポジティブ”な選択であるという考えが伝わってきます。

せつ菜が返すこの言葉も、栞子の反論も「それはそう」って感じですよね。

せつ菜としては、ずっと背中を押してくれた栞子の存在は非常に大きなものだと感じているはずなので、「2つやる可能性」を肯定してくれた栞子に、今度は自分が返す番だという”気持ち”も間違いないものです。ただ栞子が言うように、せつ菜には両方の「適性」があった。自分自身にはスクールアイドルの適性が無いと考えているため、せつ菜だからこそやり遂げられることだと、栞子は誰よりもハッキリと認識しているわけですね。実際、栞子のサポート適性がかなり高いことは、一年生ながら合同文化祭の運営を取り仕切る様子から疑いようもないことです。両者ともの思いが汲み取れるだけに、かなり辛いシーンでした。

 


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薫子とすれ違う栞子。ここのシーンも、薫子、栞子の「目」が映らない描写が何度かありましたね。交互に「目」が映るカットから、視線を合わせた対話が困難な両者の心的距離を感じさせますね。

 

 

栞子、薫子の過去が明かされ、両者とスクールアイドルの関係が徐々に見えてきました。最後にはついに同好会側が歩み寄り、栞子に一度手を伸ばしましたが、その手を払われてしまいましたね。ここら辺のプロットを少しまとめ直したいと思います。

 

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栞子は、憧れのスクールアイドルで、自分に「夢」を与えてくれた姉が、そのスクールアイドルに泣かされた姿を見て、「姉にはスクールアイドルの適性が無かった」と決めつけました。この経験から、身の丈に合わないことはやらず、適性に沿って活躍していくことを志しました。ここまでは100納得できます。自分の「やりたい!」という感情は、「適性」と対極にいると言っても良いものだとも思うので、自分の気持ちに諦めを付けてしまうこともまぁわかる。大好きな姉の苦しみを間近で見たら尚更ね。

でもこれ、「スクールアイドルになりたい」という自分の夢を否定するには弱い。弱すぎる。

栞子は一度でも自分にスクールアイドルの適性があるかどうか、推し量ったことがあるのでしょうか。”適性が無い”とまだ判断することができない状況でその可能性を排除するのは、「適性に沿う」生き方を目指す栞子にとって致命的ともいえるんじゃないでしょうか。自分にその適性があるのかどうか、ハッキリしていないのにNOを突き付けるのは、栞子の哲学を瓦解させてしまっているようにすら感じます。

まぁこの辺は幼い頃の経験なので、スクールアイドルがある種トラウマの様になっているのかもしれませんが、この「適性」をハッキリさせれば良いだけっぽいので、栞子と同好会との交点は案外そう難しくなく求められそうですね。

 

5. "後悔"の選択

 


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これ、マジでせつ菜じゃない?

この時はせつ菜くらい髪の長かった栞子が、高校生になると姉と同じくらいのショートカットになっているのは、やはり”憧れ”の表れなのかもしれません。

 

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「私は同じ失敗をしない。

誰だって、そんな思いをするべきじゃないんです。」

なるほど、事前に適性が分かっていなかったから”不要な後悔”をした、そう消化していたんだな…。これ、やっぱり一種の”逃げ”だと思うんですよね。栞子が薫子に対して抱いている思いも、栞子の目線に立って言うならば「適性が無いか確認もせずに続けたから後悔した」という解釈をした方が正しいと思います。”不要な後悔”とはこういうことでしょね。ならば、栞子自身も一度足を踏み入れてみて、というのが正しい筋なんじゃないかと思います。

 

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栞子の話を持ち帰り、相談する同好会。

やっぱりこういうシーンで、これまでの歩みが透けて見えるセリフ割りがこの上なくうまいですよねこのアニメ。

「身の丈に合わないことはしないで、向いていることだけに全力を尽くす、かぁ。」

「やるやらないは、本人の自由よ。」

彼方は決して身の丈に合わないことをしていたわけでは無いですが、勉強にバイト、家のことまでと奔走していましたね。それもこれも、家族のため、もっと言えば妹の遥ちゃんのためであり、スクールアイドルというわがままを貫くためのことでもありました。共感できる部分はあれど、完全に納得できることじゃなかったのかもしれません。果林に関しても、やっぱりドライでリアリスティックな立場のキャラが一人いることがむちゃくちゃデカいなと感じますね。もろちん、蓋を開けてみればチャーミングな一面を併せ持つ果林さんではありますが、こういう場で感情的に流されがちな女子高生の集団の中でブレーキをかけることができるポジションというのは、同好会の健全で正常な運営の中で欠かせないものだと、つくづく感じさせられます。

 

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一方で、果林の言葉に顔を曇らせるエマ。果林の言葉の真意に反応したと同時に、”適性”なんて考えず海を渡ってきたエマには、栞子の言葉は刺さるものがあったのかもしれませんね。

 

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「それでも、放っておけないよ。」

「でも、それって。後悔……するんじゃないかな。」

「あなたたちって、本当にお人よしね。」

「もう一度だけ、私たちの思いを三船さんに伝えましょう!」

コレなんですよね。これが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会なんですよ。

一見、善意の押し付けのように見える同好会のスタンスですが、学園の一般生徒にだったらここまで強引な手段は取らなかったんじゃないかなと思います。でも、栞子はただの一般生徒じゃない。同好会が望んだスクールアイドルフェスティバルについて、外側から最も尽力してくれた生徒であり、そんな栞子が他でも無いスクールアイドルのことで"後悔するかもしれない"ともなれば、見過ごすわけにはいかないのは当然のことでしょう。

ここでも果林の言葉はどこまでも現実的でした。というのも、栞子の問題は同好会にとって早急な問題というわけでもなく、これといって被害を被ってるわけでは無いからです(アニメでは、ね)。そりゃもちろん、栞子も一緒にスクールアイドルをやることができたらそれに越したことはありませんが、当の本人はそれに難色を示しています。同好会の対応は、まさに「お人よし」以外の何者でもなく、なんなら「お節介」と言うべきかもしれません。でも、これで良いんです。

僕がこのプロットで評価してるのは「後悔」というキーワードを持ってきたことです。この先のシナリオと関連があるのであとでまとめ直しますが、過干渉だと分かっていても、スクールアイドルのことで「後悔」するかもしれない人が、自分たちのすぐ近くにいて、かつ恩義のある人ならば同好会として無視することはできません。

必然性、と言われると確かに薄い内容ではありましたが、彼女らの選択は深く共感することができ、良い導線であるように感じました。

 

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果林の言葉に今度は微笑むエマ。「みんなをポカポカにする」ことを目指していることもそうですし、2話3話でランジュに対しての自分の行動を「お節介」と評していたこともあり、同好会の暖かさを感じるシーンで笑顔を見せるエマ、最高ですね。果林自身も、1期6話で厳しい言葉を言いつつ璃奈を気にしていたり、愛と美里の仲を進展させるのに一役買ったりと、「お節介焼き」な一面がありましたね。この辺りも見透かした上で、果林の言葉に呼応するエマの笑顔だったのかもしれません。

「もう一度だけ」という言葉も、何気なくスルーしてしまいそうですけど「お節介だと分かっているけど、それでも…!」という同好会の意思が読み取れるようで面白いですね。

 

 

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もう一度栞子の元へ行く2年生ズ。

「フェスの様子を参加者として確かめるのも、大切な仕事ですよ!」

やや強引に映りつつも、やっぱりせつ菜のこういう機転の利く物言いが良いですよね。はんぺんの居場所を校内に作ったときや、『DIVE!』でやり過ぎたときの退散シーンだったり、真面目でしっかり者でも堅物ではなく頓智を働かせた推進力が心地いいですね。

まぁ、今でこそ微笑ましく思えるシーンですけど、冷静に考えたら上級生が4人がかりで1年生を”遊び”に連れ出すのって、なかなかですね……。

栞子、裏で愛さんにカツアゲとかされてないかな…。

 


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射的やVRゲーム、三輪車(?)の企画に参加していましたが、VRゲームではゲーム好きのせつ菜を破る一方で、三輪車レースでは最後方にいるなど、この一幕でもそれぞれの「適性」があるのかなぁなんて思いました。

 

 


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「どなたも、自分のやりたいことを体現されていると感じました。」

もう言及しなくても、栞子が言ったこの言葉に感じたものは伝わると思います。コレも、重要な1フレーズなので、また後でまとめます。

妹がカツアゲされているのを見かける薫子。放っては置けないよなぁ!?

 

6. "夢がここからはじまるよ"

 

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これ、マジでそんな予感しました。本当の話なんですけど、キャラが喋る前の段階で僕の心はざわついていて、用意されていたステージの印象と、集まっていた10人の同好会メンバー、"スクールアイドルフェスティバル"という冠も含めて、『夢がここからはじまるよ』を感じたんですよね。

と思ってたら、同好会のみんなのこの言葉ですよ。

「ここが、三船さんの夢が始まった場所でしょ。」

「三船さん。やりたいこと、してください。

私がスクールアイドルと生徒会長を両立できたのは、同好会、生徒会、ファンのみんな。そして三船さん、あなたがいたからです!」

「みんなの夢を叶える日だよね!」

「こんなに頑張ってくれた栞子ちゃんの夢も叶わなきゃ、スクールアイドルフェスティバルは成功とはいえないよね。」

もう『夢がここからはじまるよ』じゃん……ッッ!

第1回開催のフィナーレを飾ったのは、突然の雨にも屈することなく多くの人々の協力のもと実現することができた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会だけのステージ。このステージには、高咲侑へ向けた明確なメッセージが込められており、皆の想いが結集したこのステージを「夢のはじまり」と形容しました。

その第1回開催を経て、「みんなの夢を叶える場所」という理念に共感をした、より多くの人々の協力により開催危機をも乗り越えて実現した第2回開催。第2回を開催するにあたって、第1回と同じことを繰り返していてはいけません。メタ的視点にはなりますが、「理念」は同じくしても、その想いを拡大し第2回における『変化』に、開催の意義を見出さなければなりません。

 

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同好会はここに「私たちが背中を押す番」という役割を見出しました。第1回開催では、「お祭り」という属性が強く、自分たちの"やりたいこと"を体現するというのが主題だったように思います。そのなかで、『夢がここからはじまるよ』の披露には、9人が温めていた「高咲侑のための歌」という想いがありましたが、内情を抜きにすれば、通り雨とステージの使用時間の制約により「タイムオーバー」だったところを、学園のみんなとファンの協力のおかげで実現できた、という構図があります。同好会は、応援してくれるパトロンのおかげであのステージに立つことができました。「ファンに与えられた」ステージなんですよね。

だからこそ第2回開催では、同じ「みんなの夢を叶える場所」という理念でも今度は「返す番」だと意気込んでいるんだと思います。

侑ちゃんがかけた言葉。栞子の「夢がはじまった場所」で、栞子へ「お返し」をしようと同好会がお節介を焼くのは、めちゃくちゃ良いじゃん……!

 

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「私の、夢......。」

「でも、姉は泣いていました。夢を叶えようと、3年間努力し続けて、最後は。

泣いていたんです!後悔していたんです!!」

「してないよ、後悔なんて。」

「でも、今ではやってよかったって思ってる!」

 

三船薫子、高坂穂乃果か?

栞子、ようやく感情を露わにしながら思いの丈を叫べましたね。姉の努力を間近で見て、その姿に憧れを抱いていたのに、涙で終わってしまったことに「後悔」の念を感じてしまっていたようですね。結局、どこまでも心が優しい子だっただけみたいです。親族の涙ひとつで心が傷んでしまった。

 

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でも。

栞子の存在が、”スクールアイドル 三船薫子”を奮い立たせていた。他でもない栞子が”ファン”でいてくれたから、薫子は後悔することなく幸せに過ごすことができた。そこに「後悔」なんて微塵もなかったんです。

その薫子が、今度は教師と立場を変えて、栞子を応援する側へ。これも「与えられたもののお返し」ですよね。100点満点です。

 

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「私に、できるでしょうか。」

「大丈夫です。そばにいますから。」

「三船さんの中のトキメキ、信じてあげて!」

「やりたい気持ちがあなたにあるなら、それだって、じゅうぶん適性なんじゃない?」

最後は結局、あの時もらったトキメキに対して「自分にできるのかどうか」という不安なんです。でも果林が言う通り、「できるかどうか」じゃないですよね(おまいう?)。

『夢がここからはじまるよ』

同好会の掲げた理念の広がりに共感した栞子。その栞子自身が救われたようなシーンでした。

 

7. EMOTION

 

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ステージに上がる三船栞子。"スクールアイドル 三船栞子"誕生のその瞬間、自分の「やりたい」に向き合った栞子が披露するのは 『EMOTION』。微笑みを見せ、上がったステージは、歯車仕掛けの時計をモチーフとした舞台。

 

今回も、印象的だった部分をピックアップしてみます。

 

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まずは、イントロ部での0時00分を指して動かない時計。

改めて後述しますが、「止まった時」でありながら一度も「動いていない時」であるように感じます。ただ止まっているだけなら、0時00分という基準時を指す必要はないですからね。

 

自分は今の自分だけ 本当に変われない?

踏み出せない ハッキリしない気持ちのままでいれば

大好きなことに嘘つくかな

Aメロ終わりからBメロにかけての歌詞ですが、映像との関連がめちゃくちゃ良い。

 

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階段を降りて”下る”栞子が行き着く先は、薄暗い一室。ここで栞子は戸惑い、怯えるような様子を見せていますね。”下る”という行為は、自分の深層心理へと向かっていくことの比喩であるように感じられます。1期3話、せつ菜の『DIVE!』でも同じような手法が使われていましたね。歌詞に目を向けてみれば、自分の「想い」に疑いの目を向け、「本当の想い」に接近しようとする栞子の意図が読み取れます。リリックに載る部分と、アニメーションで輪郭をハッキリさせるというのは、テレビアニメ挿入歌の特権ともいえる部分で、やっと栞子もここまで来たか…。という思いに駆られてしまいました。

「踏み出せない」という言葉を使ってくれたのも、僕の中の栞子像をハッキリしてくれたワンフレーズで、とても好きですね。やっぱりスクールアイドルに対しては「適性」という言葉を隠れ蓑にして、「踏み出せなかった」だけだったんですね…。

 

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そしてこれ…………!!!

もうこのシーンだけで『EMOTION』に関しては1000000000000億点あげたいです。

「大好きなことに嘘つくかな」というリリックに合わせて、「羽根」「鍵」を見つける栞子。

これ、マジでやってる。

アニガサキ、『EMOTION』、やり過ぎです。

まず「羽根」の存在。これは再三言及していることですし、ラブライブ!に生きるオタク各位にはリーサルウェポンとなっているキーアイテムですね。

μ’sの羽ばたきで拡散した「白い羽根」Aqoursはこれを受け取り、自分たちだけの「青い羽根」へと昇華させました。アニガサキ2期でも、このアイテムは登場していましたね。

結局のところ、表題の”Infinity! Our wings!!”とはなんだったのか。

Infinity! Our wings!!とは無限の翼、あえて言い換えるならば、無数の可能性の存在を認識させる曲であり、A・ZU・NAが見た"数多の自由な可能性"が充分に反映された曲であると考えています。さらに拡張するならば、このライブが開催されるまでせつ菜をはじめとして生徒会、同好会、他校のスクールアイドルを含めて多くの人間がたくさんの可能性を探し、「たくさんの可能性とかくれんぼした」わけですよね。たくさんの可能性のかき集めによって披露されるこの曲が、無限の可能性という不確かなものへの信頼性と、その可能性の存在への喜びを謳う、そんな曲になっているんじゃないかなと考えてます。

また、"wings"にはスクールアイドル博物館で目の当たりした"スクールアイドルの輝き"が表現されてると感じます。すなわち、我々がμ'sAqoursの輝きに魅せられた時、彼女らが"自由に"羽ばたくことによって拡散された「羽根」の存在を何度も目撃してきたはずですね。μ’sが広げた”真っ白”な「羽根」ラブライブ!サンシャイン!!を経た今考えれば、スクールアイドルそれぞれの個性、すなわち”色”を塗れるようにと、まさに未来に続くスクールアイドルそれぞれ固有の「可能性」を願い蒔いた”真っ白”な「羽根」だと思いますし、WATER BLUE NEW WORLD でAqoursが羽ばたいた時に、”青い”「羽根」という自分たちの輝きを見つけたことからも裏付けされます。まさに「個性」、「色」、「可能性」を賞賛する虹ヶ咲にとって、この有機的なつながりが見えることで、"せつ菜にフィーチャーされた6話の挿入歌"というよりもむしろ、"5話で感じた自由という『コンセプト』が、優木せつ菜の目覚めによって誘起されたA・ZU・NAの始まりの歌"という印象に昇華されるように感じられ、この上ない幸福感すら覚えます。

 

sunagimo5critical.hateblo.jp

自分だけの輝き、その「可能性」を秘めた羽根。

栞子はこの「羽根」を自分の深層へ自問自答を繰り返す中で発見するわけですよね。この6話で書いた虹ヶ咲での「羽根」については、僕が好き勝手に書いたことでしかないんですけど、7話ですぐ栞子と結びつくあたり、中川菜々が優木せつ菜であることを明かし、””大好き””な気持ちに嘘をつかず、踏みだした結果披露された『Infinity! Our wings!!』が持っていた意味を再認識せざるを得ませんでした。「大好きな気持ち」と向き合い、過去を清算して”スクールアイドルとして舞台に立つ”ということは、ラブライブ!サンシャイン!!1期で千歌がμ’sとの決別を描いた物語と同じだと思います。それと同じ意味を挿入歌のたかだか数秒で込めてくるのは、もうヤバ過ぎてひっくり返りました。

しかも、これで終わらない。

 

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この羽根、鍵もですけど本の間に挟まっていたんですよね。まさに”栞”の様に。しかも同時に見つけた鍵で、冒頭の時計のねじを巻き、時を刻み始めるんですよね。

 

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なおかつ、注目して欲しいのは、羽根と鍵が本の間に"既に"挟まっていたことです。Aqoursの時と比較するならば、千歌が"μ'sの残したもの"に触れ、自分たちの「スクールアイドル」哲学に気付いた時に初めて羽根を手にしたんですよね。

Liella!と比較すれば、1期1話「まだ名もないキモチ」で、かのんの鞄に入り込む羽根の描写がありましたが、これも無自覚ながら羽根を手にしたわけです。

両者とも、自分たちだけの物語の始まりの"キー"として、最初の羽ばたきとして初めて羽根を手に入れる。一方で、栞子の場合は"栞"としてこの「羽根と鍵」が機能しているため、入手したタイミングは本を開く前だということが読み取れます。栞子の「最初の羽ばたき」は、薫子とともにスクールアイドルに夢中だったあの時であり、あの時こそ栞子の「夢のはじまり」だったわけですよね。姉に起きた出来事から、自分の心の奥底に「鍵」をかけて塞ぎ込んだ栞子の物語ですが、年月が経った今でも、"輝き"を失わず、自分の夢の存在を示してくれていた「羽根」。スクールアイドルとしての胎動を始めただけで、ステージには立っていなかった当時のまっさらな可能性が、夢を繋ぎ止めてくれたわけですよね。

この羽根と鍵が、栞子が再び本を開き物語を先に進めるきっかけをくれた。

揺るぎないキズナ胸に 物語は次の舞台へ

そうここから 輝き紡いでゆけ

これ以上何も言うことはありません。

1000000000000億点加点。優勝。やり過ぎ。ありがとう。

 

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素直でもっといたい 心を隠したり

あの日の私はまだ弱くて 簡単に泣いたけど

ちょっと背伸びして 臆病にバイバイする

解き放ってここで あなたに届け

EMOTION

等身大の栞子が情感たっぷりの表情で歌っているサビ、やっぱり良いですよね。

あの日の自分を「臆病」と表現すること。「弱い」というのは、仕方のない部分があると思います。当時の栞子は小学生くらいでしょうし、ショッキングな出来事に打ちひしがれるのは致し方ないことです。ただそれゆえに、「やりたい」の気持ちと向き合ってこなかった、向き合う勇気がなかった、踏み出せなかったというのも事実です。「臆病」というのは強度の高い言葉であるように感じますが、それだけ栞子にとってスクールアイドルがどの程度の位置付けだったのかを裏返しで表現しているようにも思えます。

そして、「ちょっと」背伸びすること。実際、栞子がスクールアイドルとしてステージに立つために必要だったことは、心理的な問題、それも姉の気持ちと自分の本当の気持ちとのすれ違いの解消であったため、大きな労力を必要とするものではありませんでした。一歩踏み出す勇気、これだけが必要だったわけですね。これを「ちょっと」の背伸びと表現するのは、それこそ「身の丈に合わないことをしない」という以前栞子が言っていたことの証左にもなっていますし、栞子の奥ゆかしさが感じられます。

 


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涙を浮かべる栞子の瞳が輝いた瞬間。憧れのスクールアイドルである薫子のステージを見たときであり、薫子の笑顔を見た瞬間なのかな、と。

あとこれ、舞台の上を緑の蝶が飛んでいるんですけど、回想の時の薫子の襟にもいるんですよね。あの時薫子にべったりついていた翡翠色の蝶が、ステージの上で自由に羽ばたけるようになった。そんなことを考えました。 

 

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その後に挿入されるステージに立ち、スポットを浴びる”スクールアイドル”の栞子。

僕はこの『EMOTION』のことを「エモい」のエモーションとかいう陳腐なものと同列にしたくなくて、というのもやっぱりこの曲の背景にあった物語は「エモい」なんてもんじゃ片付けられないじゃないですか。でも、やっぱりこの栞子の後ろ姿にはセンチメンタルな気持ちになってしまいます。

 

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そして、秒針が進む。”スクールアイドル 三船栞子の誕生”ですね。

アッパレなMV、見事な歌唱でした。

 

youtu.be

 

8. 夢の記憶

 

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「どうでしたか?」

「まだまだ練習が必要ね。」

「…分かってます!」

「けど、私は大好きだよ。」

良い一幕でしたね。「大好き」の連鎖。

「やりたい」の気持ち、大きく言い換えれば「大好き」の気持ちに正直になった栞子。"与えてくれた"姉に"返す"構図が伝わってくるこのシーンは、栞子が同好会サイドの哲学を全うしていることを印象付けるシーンでした。

 

「いえ、フェスティバルの間は、今まで通り全力で職務に励みます。

ですがそれが終わったら、私もスクールアイドルの仲間に入れてもらえますか?」

このあたりブレないのが"らしい"ですよね。

スクールアイドルの適性も花開いた栞子ですが、これまでのサポートに徹する適性が無くなるわけではありません。この辺りのバランス感覚が本当に上手いなと感じます。

 

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寂しそうな顔を浮かべるランジュ。

このランジュにはちょっと"来る"ものがありましたね…。

薫子がスクールアイドルと栞子を出会わせた時、その理由を「ランジュが香港に行って寂しそうだったから」と語っていました。なのに、"スクールアイドル 三船栞子"がランジュを寂しそうにする。ちょっと残酷だな…と思いつつ、ランジュの中の心境の変化、この先で描かれるものへの期待でここでは留めておきます。

 

7話は、三船栞子にライトが当たり、同好会加入までのストーリーが描かれました。見る人によっては、栞子加入エピソードの1話完結というスピード感に戸惑ったかもしれませんが、個人的にはそれを補って余りある補完材料が注ぎ込まれていたので、むしろ良く描き切ったな…という気持ちのほうが大きいです。1期だってもちろん関連はあれど、「担当回」として言ってしまえば1話完結でしたしね。

 

総括したいと思います。

 

シナリオ上のキーワードとして、「後悔」というものがありました。これは、夢破れた薫子の涙を見て、「後悔したんじゃないか」と栞子が感じたこと、対照的に「やりたい」から目を背ける栞子を見て、「後悔するんじゃないか」と同好会が感じたこと。この2つの「後悔」があったと思います。

前者は、結局勘違いではありましたが「夢を叶えるための努力に裏切られ、傷ついてしまった」というのが本質だと思います。

しかし、僕たちはアニガサキの2期に入ってから、たくさんのスクールアイドルの存在を認識しました。前述の通りμ'sやAqoursのように、大きな命題に向き合い、栄光を掴んできたスクールアイドルは、実際ごく僅かなはずです。

大半のスクールアイドルが、夢半ばで引退をすることになる。

では、その時に流す涙の全ては、後悔の涙なのでしょうか。

スクールアイドルの輝きは、ラブライブという大会で栄光を掴むことだけではないと、μ'sが教えてくれたはずですね。薫子が言うように、残るのは後悔の念ばかりではなく、「やって良かった」という何にも変え難いプレシャスな思いが詰まっていたんじゃないでしょうか。

後者は、「やりたい(大好き)という思いから目を背け続けること」に対する後悔というのが本質だと思います。これについては、勘違いとかじゃなく間違いなく後悔しますよね。同好会側が感じていた不安要素は「後悔するかしないか」ではなく、「もし気持ちに嘘をついているなら」という仮定の正誤が定かではなかったからであって、この仮定が正しいならば、後悔というのは当然の帰結になると思います。栞子は「自己犠牲」とは少し違うが、自分の時間の全てを使って「みんなの夢を叶える舞台」作りに尽力してくれました。そんな栞子自身の夢が叶わないのは、スクールアイドルフェスティバルの失敗に等しい。エマと彼方が本編中で言っていたように(最高か?)、同好会のみんなは本気でそう思っているんです。栞子のことだから、きっと"特別扱い"することなくフェスティバルに関わる全てのパートに平等に接してきていると思いますが、同好会からしたら一番協力してくれた人です。

結果、同好会→栞子の一方通行の矢印が働いてるかのような構図ではありましたが、これが栞子の中に眠っていた「夢の記憶」を呼び起こし、きっかけを"与える"ことになりました。

前者の文脈で「適性のないことに注力することは、後悔を生む」と考えていた栞子が、後者の文脈では「本当は適性があるかもしれないことから逃げ続けることは、後悔を生む」と再解釈することができたのは、この7話の重要なポイントであるように感じます。

また、栞子の心境変化のキッカケは「やりたいことを体現する」せつ菜たちに連れ出されたことも大きいと思います。実際に連れ出されなかったら感じられなかったこと。学園の生徒の想いに触れたことが、自分の「やりたい」と向き合うモチベーションになったのかもしれませんね。あの時だって、実際にやってみなければVRゲームでせつ菜よりも「適性」があったなんて、分かりませんでしたよね。

 

このままじゃきっと 変わらない明日が来るだけ

爆発しそうな衝動が疼いてる

間違いだって構わない 後悔だけは残さない

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薫子が夢破れた(ように見えた)あの日、自分のココロの中の”スクールアイドル”に”栞”をはさんで本を閉じ、物語を中断し、時が止まりました。

歯車は、どんなに小さく些細な問題でさえ、噛み合わせに支障をきたせば動かなくなります。

しかし、時は再び動き出す。あの日挟んだ”栞”の先を紡ぐように。「ファン」であった栞子の「夢」が、「スクールアイドル」の栞子の「夢」へと繋がり、夢がここからはじまる。秒針が初めて時を刻みます。

 


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あの時夢見た憧れのステージに、長い時を経ていま”自分で立ち”、スポットライトを浴びました。

「じゃ、いつか自分で立ちなさい!」

栞をはさめば、いつでも続きを始められる。

"栞"とは、物語の終止符ではなく小休止であり、次の物語への始まりでもあるわけですね。

 

 

冒頭の歌詞引用に戻ります。

栞子は、自身が望む世界を”遥かな世界”と形容しました。しかし、実現可能性が低いものと位置付けながらも、自分の確固たる願いのために進み続けていましたね。

足踏みをしていた頃の栞子は、「適性」にあったことをやるべきだという自分の軸を持ち、これを人に勧めることで適性の「結果」を出し、正しさの証明をすることに躍起になっていたように感じます。ただ、その物差しだけでは測ることの出来ないイレギュラーと衝突してしまう。その折、自分とも因縁(?)のあったスクールアイドルと邂逅を果たすことにより、未来への一歩を踏み出すわけです。

適性に沿って人を動かすのではなく、自分のパフォーマンスによって他人をモチベートしていく。自分のパフォーマンスによって幸せを届ける、あるいは幸せをつかむためのきっかけを与える。そうした”幸せの連鎖”で、「誰もが幸せになれる世界」へ、輝きを紡いでいく。

これが、栞子が見出した「スクールアイドルの適性」であり、栞子が目指すスクールアイドル像なんじゃないかなと思います。

 

ひらひらり空を舞う蝶のように 

わずかでも風を起こして

やがて誰かの背中を押す日まで

栞子はバタフライエフェクトのように大層なことを起こしたいのではなく、ただ誰かの背中を押したいだけなんですね。ここは『EMOTION』での「ちょっと背伸びして」にも通ずるものがあると感じます。

たとえ今はまだ漠然とした夢でも。

三船栞子は、あの日受け取ったトキメキを確かに抱きしめながら、遥かな世界への一歩を踏み出しました。

第7話「夢の記憶」は、ついに2期で追加された新キャラクターの加入模様が描かれ、アニメ以前にあった文脈を汲み取りながらもアニガサキの「イズム」を存分に注入した高級な回となりました。

 

次回第8話は「虹が始まる場所」

放送前からサブタイトルの神回臭がプンプンしてましたね。

虹の始まる場所、虹の端には辿り着けないというのが通説ではありますが、さてアニガサキの文脈ではどう解釈されるのか。

残るランジュ、ミアの加入までのシナリオと既存キャラ達のさらなる活躍への期待を持って、筆を置きたいと思います。

 

 

言うな。

代わりに薫子の過去の悪行を供養しておきます。

 

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ありがとうございました!

 

【虹ヶ咲2期6話感想】”大好き”を、届けに行こう!

 

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今回は、虹ヶ咲2期第6話「"大好き"の選択を」の感想記事となります。前回5話で、スクールアイドルの"自由"という概念に触れ、ユニットを結成することになった歩夢、しずく、せつ菜でしたが、そんな3人がどのようにステージに立ち、何を想って歌うのか注目のストーリーでした。

 

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果林へのモーニングコールのくだりで少しずつ接点を見せ始めている愛と果林ですが、どのようにDiverDivaが結成されるのか注目です。

 

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【虹ヶ咲2期3話感想】夢の世界への、新しい地図――。

どうもこんにちは。むさしです。

今回は虹ヶ咲2期3話「sing! song! smile!」の感想記事となります。第3話は、向き合うのにかなり時間を要しました。過去シリーズでも、ターニングポイントとなっていた2期3話。例によってクソデカ激重感情を抱いてしまっていますが、2話で描かれたQU4RTZ結成前日譚、果たしてランジュにハーモニーは届くのか…。

 

 

 

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【虹ヶ咲2期2話感想】輝く明日へ、響かせてハーモニー

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今回は虹ヶ咲2期2話「重なる色」の感想記事となります。

前回意気揚々とタイムリーに記事を上げていきたいと言っておきながらでに3話が放送され、特大感情を抱えてしまっていますが、きっと追いつきます。

価値観の違いから同好会とは違う道でスクールアイドルとして活動することを決めたランジュ。両陣営がどのように交わっていくのか、注目の第2話でした。

 

 

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